その渡世人は、甲州街道を東から來た。腰に巻きつけた赤いシゴキも色褪せ、汚れきった道中合羽や振り分け荷物が渡世人の長い道中を物語っている。渡世人は、ある草っ原で非人に襲われている鳥追い女・お八重を救った。そして、無表情に立ち去る渡世人の後をお八重が追った。とある茶屋の前で、一人の浪人が旅の女を抱えている前で、一人の渡世人が、その女を放すことを懇願していた。その浪人が女を放さないと知った時、渡世人の手から、閃光が飛んだかと思う早さで、浪人の肩に出刃包丁が突き刺っていた。浪人を倒した渡世人は、野次馬の中にいた渡世人に聲をかけた。「左手の指三本に腰の赤いシゴキ帯おめえさん、御子神の丈吉だろ」「おめえさんは風車の小文治。目印は胸の古傷に庖丁投げ」「実のところ、たっぷり禮金をもらって、丈吉って野郎を殺すように頼まれている」。小文治は、丈吉が女房と子供の仇として狙...
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